研修会「処方箋のその先へ!患者情報から読み解く抗菌薬適正使用マスターへの道」を受講しました。
※写真はイメージです。こうした「今ある大切な資源(抗菌薬)」を未来に繋ぐための学びをしてきました。
1時間45分という時間はあっという間でしたが、そこで語られた内容は、今の日本の医療現場が抱える深刻な課題そのものでした。
今回の研修を通して、私が強く感じた「危機感」と「これからの決意」を共有したいと思います。
1. 「新しい武器」が作れないという現実
今、新しい抗菌薬の承認数は世界的に見ても極めて少ない状況にあります。 かつてのように「耐性菌ができても新しい薬を使えばいい」という時代は終わりました。私たちは今、手元にある限られた「抗菌薬という資源」を、いかに大切に、次世代に繋いでいくかという局面に立たされています。
2. 逆行する現状:薬剤耐性対策の壁
国が掲げる「薬剤耐性対策アクションプラン」では、抗菌薬の使用量を減らす明確な目標が立てられていますが、目標達成は非常に困難な状況にあるという厳しい現実を突きつけられました。
現場で散見される課題も挙げられていました。一部を紹介します。
-
風邪(ウイルス性)への「念のため」の処方: 抗菌薬が効かないはずの症状に対し、依然として処方されるケースがあります。その背景には、「どうしても薬(抗菌薬)がほしい」という患者さん側からの強い希望があることも少なくないそうです。
-
これまでは「念のため」で済んでいたかもしれませんが、これからは違います。私たち医療従事者だけでなく、患者さん側にも「風邪に抗菌薬は効かない」「不適切な使用が未来の薬を奪う」という正しい知識を持っていただくこと、つまり“患者側の学び”も不可欠であると痛感しました。
-
-
薬剤選択のミスマッチ: 例えば、原因の83%が大腸菌とされる尿路感染症に対し、すでに耐性率が高まっている製剤が選択されている。
これらは、耐性菌の発生をさらに助長してしまう「不適切な使用」に他なりません。
3. 「処方箋のその先」を見つめる薬剤師へ
研修を受けて確信したのは、私たち薬剤師の役割の大きさです。
処方箋に書かれた通りに調剤するだけでなく、
-
「この処方は、ガイドラインに沿った適切な選択か?」
-
「患者さんの背景から見て、耐性菌のリスクはどう変化するか?」 という視点を持ち、時には処方医と連携し、時には患者さんに抗菌薬の正しい知識を伝える。
この「一歩踏み込んだ関わり」こそが、今ある抗菌薬を守る唯一の道だと感じました。
最後に
1時間45分とは思えないほどの情報量に圧倒されましたが、その根底にあるメッセージはシンプルでした。「今ある薬を、正しく使い、守り抜くこと」
明日からの服薬指導や疑義照会において、今日学んだ知見を最大限に活かし、これからも研鑽を続けていきます!
